共働きで働いていると、生命保険のことは「とりあえず入っている」で止まりがちです。結婚したとき、子どもが生まれたとき、すすめられるまま契約して、そのままになっている。我が家もそうでした。
そもそもの入り口は、会社に出入りしていた生命保険の担当者にすすめられての契約でした。その後、結婚したときに受取人を妻に変えた——見直しらしい見直しは、正直それくらいです。深く考えて選んだというより、きっかけがあるたびに最低限だけ動かしてきた、というのが実際のところでした。
ただ、共働き世帯の保険には、片働き世帯とは違う前提があります。その前提を確認しないまま「もっと手厚くしたほうがいいのかな」と考えると、必要のない保障を積み増してしまうことがあります。
この記事では、生命保険を見直す前に確認しておきたいことを整理します。売るための記事ではないので、「入るべき」とも「不要」とも言いません。まず現状を確認して、必要なら次の一歩に進む——その順番で書いていきます。
そもそも、なぜ共働きは「入りすぎ」になりやすいのか

生命保険の必要保障額は、多くの場合「一家の稼ぎ手に万一のことがあったとき、残された家族が生活していけるか」という発想で計算されます。
この計算は、もともと片働き世帯を前提に作られていることが多いものです。稼ぎ手が一人で、その人がいなくなると世帯収入がゼロに近づく。だから、その穴を大きく埋める保障が要る、という考え方です。
共働き世帯は、この前提が最初から崩れています。二人とも収入があるので、片方に万一のことがあっても、もう片方の収入が残ります。世帯収入がゼロになるわけではありません。
にもかかわらず、片働き前提の計算式や、片働きを想定した提案をそのまま当てはめると、本来は要らないはずの保障まで積んでしまうことがあります。共働きが「入りすぎ」になりやすいのは、このズレが理由です。
だからといって「共働きなら生命保険は要らない」という話でもありません。子どもの年齢、住まい、貯蓄の状況によって、必要な世帯は当然あります。要らないと言い切るのも、手厚くすべきと煽るのも、どちらも現状確認を飛ばした結論です。まず確認しましょう。
見直す前に確認する3つのこと

保険会社や相談窓口に行く前に、我が家でも確認したことが3つあります。ここが整理できていないと、どんな提案を受けても「これで足りているのか」を自分で判断できません。逆に、ここさえ押さえておけば、見直しの精度がぐっと上がります。
1. 誰の、何年分を必要としているのか
「万一に備える」と言うとき、誰にどんな万一が起きた場合の、何年分の何を備えるのかを具体化しないと、金額は決まりません。
たとえば、子どもが独立するまでの生活費なのか、住居費なのか、教育費なのか。何年分なのか。共働きなら、残されたほうの収入で賄える部分を差し引いて考えます。ここを曖昧にしたまま「なんとなく不安だから多めに」とすると、金額はいくらでも膨らみます。
必要保障額は世帯ごとに大きく変わります。年収も、子どもの人数も年齢も、住まいが賃貸か持ち家かも違うからです。だから「共働きの正解額」のような一律の数字は存在しません。まず自分の世帯の数字で考えることが出発点になります。
2. 遺族年金でどこまでカバーされるか
万一のとき、公的な遺族年金が支給されるケースがあります。これを勘定に入れずに民間の生命保険だけで穴を埋めようとすると、保障が過剰になりがちです。
遺族年金は、亡くなった方の働き方(会社員か自営業か)、子どもの有無や年齢によって、支給される種類も金額も変わります。「公的な支えがまずあって、その上で足りない分を民間保険で補う」という順番で考えると、必要な保障の大きさが現実的な水準に落ち着きます。
なお、遺族年金の制度は将来的に見直される可能性があります。金額や要件を確認するときは、公的機関の最新情報をあたるのが確実です。
3. 勤務先の保障で、すでに備わっている分
見落としやすいのが、勤務先を通じてすでに何らかの保障がついているケースです。会社によっては、団体の保険や、死亡・弔慰にかかわる制度が用意されていることがあります。
共働きだと、これが二人分あることになります。二人とも会社員なら、世帯として二重に備わっている可能性がある、ということです。この分を確認しないまま民間保険を検討すると、同じリスクに二重で払うことになりかねません。
我が家も、加入状況を並べて見直したとき、「これは何に備えているんだっけ」と自分たちで説明できない契約がありました。まずは今ある保障を書き出して、重なりがないかを見るだけでも収穫があります。
共働きだからこそ出てくる、二つの論点

上の3つを確認したうえで、共働き世帯には特有の論点が二つあります。ここが、片働きを前提にした一般的な保険の話では抜け落ちやすいところです。
保障が二重になりがち
先ほどの「勤務先の保障」とも重なりますが、共働きは同じリスクへの備えが世帯内でダブりやすい構造にあります。
二人がそれぞれ独身時代からの契約を持ち越していたり、それぞれの会社の団体保険に入っていたり、医療保障が夫婦別々に手厚くついていたり。一つひとつは間違っていなくても、世帯全体で見ると「同じ備えが二つある」状態になっていることがあります。見直しの第一歩は、増やす検討ではなく、この重なりを解くことだったりします。
どちらが「稼ぎ手」か、はっきりしない
片働き世帯なら、稼ぎ手は明確です。共働きは、ここが曖昧になります。
収入がほぼ同じこともあれば、時期によって主従が入れ替わることもある。育休や時短で一時的に一方の収入が下がることもあります。この「稼ぎ手が固定されていない」という共働きらしさは、「稼ぎ手に万一があったら」という従来の発想と噛み合いません。
だからこそ、片方に万一があったとき、もう片方の収入と公的保障でどこまで持ちこたえられるかを、両方向で確認しておく意味があります。夫側だけ、妻側だけ、ではなく、どちらが欠けた場合も見ておく。共働きの見直しは、この両面から考えると抜けが少なくなります。
見直しの選択肢は、大きく3つ

現状の確認ができたら、次は見直しの進め方です。方法は大きく3つあります。どれが正解ということはなく、かけられる手間と、自分で判断したい度合いによって選べば十分です。
自分で調べて見直す。 上の3点を自分で整理できたなら、あとは公的機関の情報や各社の資料をあたって、自分で調整する方法があります。手数料や中間の説明が入らないぶん、いちばん素直です。時間と、多少の調べる手間はかかります。
保険相談の窓口を使う。 必要保障額の考え方から一緒に整理してほしい、公的保障との兼ね合いが自分では判断しづらい、という場合は、保険相談を使う手があります。対面型・オンライン型があり、複数社の商品を横断して見てもらえるのが利点です。ただし、後述する注意点があります。
ネットで比較する。 商品の比較だけならネットの比較サイトでも足ります。ただし比較サイトは「入ること」を前提に並んでいることが多いので、まず現状確認を済ませてから使うほうが、必要のないものを勧められにくくなります。
順番として大事なのは、どの方法を選ぶにしても、確認が先、相談や比較は後だということです。現状が整理できていない状態で窓口に行くと、提案されるまま決めてしまいやすくなります。
保険相談を使うときに、知っておきたいこと

保険相談は便利な選択肢ですが、使う前に知っておいたほうがいいことがあります。ここを飛ばして「無料だから」とだけで判断すると、見直しのつもりが、かえって契約が増えて終わることもあります。
相談窓口は、多くの場合、保険が成約すると報酬が入る仕組みで運営されています。 無料で相談できるのは、その仕組みがあるからです。これ自体は悪いことではありませんが、「相談する側と、すすめる側の利害は完全には一致しない」ことは、頭の片隅に置いておいて損はありません。
そのうえで、次のような点に気をつけると、相談を落ち着いて使えます。
- 特定の商品に話が寄りすぎていないか。 幅広く比較してくれるはずが、気づけば一社の商品に誘導されている、ということがあります。「他の選択肢は」と聞き返してみると、姿勢が見えます。
- その場で契約を急がされないか。 見直しは急ぐものではありません。持ち帰って考える、と言える相手かどうかは一つの目安です。
- 確認した現状を、こちらから伝えられるか。 上の3点を整理してから行くと、「その保障はもう会社の制度でありますよ」と、こちらから言える。受け身にならずに済みます。
こうした注意点を書くと、相談をすすめにくくなるようにも見えます。それでも書くのは、読者が損をしない順番で進んでほしいからです。確認を済ませ、注意点を知ったうえでなら、保険相談はむしろ心強い選択肢になります。
我が家の場合

我が家も、共働きのまま「なんとなく入っている」状態が続いていました。冒頭で触れたとおり、入り口は会社に出入りしていた担当者にすすめられての契約で、その後の見直しも受取人を変えたくらい。中身をちゃんと確認したことは、正直ほとんどありませんでした。
見直しのきっかけは、大きな不安があったからではなく、契約の中身を一度並べて確認してみようと思い立ったことでした。並べてみると、上に書いたことがそのまま当てはまりました。会社の制度で備わっている分があり、夫婦で似た保障が重なっている箇所もありました。まず増やすより先に、重なりを整理するところから始めた——それが我が家の実感です。
これはあくまで一例で、必要な保障は世帯ごとに違います。同じことをすれば同じ結論になる、というものではありません。ただ、「まず現状を確認する」という入口だけは、どの世帯でも共通して使えると思っています。
まとめ:確認してから、必要なら相談へ
共働き世帯の生命保険で、いちばん伝えたい順番はこれです。
- 確認する。 誰の何年分を必要としているか/遺族年金でどこまで賄えるか/勤務先の保障で何が備わっているか。この3つを整理する。
- 共働き特有の重なりを解く。 同じ備えがダブっていないか、稼ぎ手が固定されていない前提で両面から見る。
- 必要なら、相談や比較に進む。 自分で/窓口で/ネットで。注意点を知ったうえで選ぶ。
片働き前提の設計をそのまま当てはめると、共働きは過剰になりやすい。でも、要らないと言い切れるわけでもない。だからこそ、煽られて増やすのでも、不安で放置するのでもなく、まず確認する。その一歩から始めるのが、遠回りに見えていちばん確実だと考えています。
以前、公的な保険を土台に、加入していた保険をまとめて見直したときも、同じ「まず確認する」から始めました。詳しくは4つの保険を全部解約して掛け捨て1本にした話にまとめています。


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